憧れの海外駐在。
外国語を駆使して、現地スタッフと打ち合わせをしたり、クライアントと交渉したりと、海外ビジネスの舞台で活躍することに憧れるビジネスパーソンも多くいらっしゃると思います。
しかし、海外で働くときには、注意すべきこともあります。
特に、現地スタッフとの関係では、彼らの仕事を奪わないように気をつけることです。
アメリカ人の同僚とのトラブル
かつて、私は、勤めていた日系企業のアメリカ支社に、駐在員として赴任していました。
元々、海外で働くことに憧れていた私は、初めての海外駐在に大変気合が入っていました。
一緒に働くチームのメンバーは、みんなアメリカ人で、使う言語は英語のみ。
もちろん、戸惑いもありましたが、チャレンジをして、早く成果を出したい気持ちが強かったことを覚えています。
しかし、仕事に順調に慣れていた中、あるトラブルが起きました。
ある日、私は、現地の同僚が、とあるプロジェクトに関する進捗状況を、他のチームメンバーに共有し忘れていることに気づきました。
私は、良かれと思って、代わりに、他のチームメンバーに進捗をアップデートしました。
そうすることで、プロジェクトが止まることもなくなり、チームの役に立てると考えたのです。
日本で同じことをした場合、日本の同僚からは、「フォローしてくれてありがとう」と言ってもらえた経験があったので、アメリカ人からも同様の反応があると思っていました。
チームのメンバーに、私自身が気配りのできる人物であり、期待の持てる人間であるとわかって欲しい気持ちもありました。
しかし、翌日、そのアメリカ人の同僚とすれ違った際、同僚からは、「サンキュー」の一言もありませんでした。
逆に、なぜか怖い顔で睨まれてしまったんです。

日本人上司からのアドバイス
何かまずいことをしてしまったのか。
気になった私は慌てて、日本本社の上司に電話しました。この方は、アメリカでの駐在経験の長い人でした。

私の話を聞いた上司はこう言いました。
「貴方のしたことは、海外では明らかにマナー違反ですよ。」
「海外では、日本と違って、仕事が無くなればすぐにクビになるんです。」
「貴方は良かれと思ってしたことかも知れませんが、同僚の方としては、貴方に仕事を奪われたと捉えます。」
「そして、貴方のことを自分の生活自体を脅かす存在だと警戒します。その辺りをわきまえないと、どんどん信用されなくなっていきますよ。」
それ以来、私は、外国人と働くときは、彼らの仕事を奪わないよう、とても気を付けています。
日本と海外の働き方の違い
日本では未だに終身雇用と新卒一括採用が主流です。
入社当初担当していた仕事がなくなったとしても、人が不足している別の仕事に充てられたり、関連会社に出向という形になったりして、解雇されるということは中々ありません。
しかし、海外では、終身雇用や一括採用という概念はなく、Job description(ジョブデスクリプション)という詳細な職務記述書に基づいた中途採用が主流であり、そこに書かれた仕事が不要になれば、その従業員は解雇されてしまうのです。
このような違いから、日本と海外のビジネスパーソンとでは、仕事に対する意識も異なってきます。
日本では、チームとして、一つの仕事に取り組むスタイルが多く、個々人の担当範囲も曖昧な場合が多いです。
そのため、何かの取りこぼしを、他の同僚がケアすることも多く、むしろ、良いことと理解されやすいです。
他方、海外では、個々人の担当範囲が明確である分、ちょっとしたおせっかいの気持ちで、他の同僚の仕事に手を出した場合、海外現地スタッフを怒らせたり、警戒させることにもなりかねません。
「勝手なことすんじゃないわよ」と言った感じでしょうか。
海外で働く際には、現地の社会システムや労働環境を知り、配慮することが重要です。
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