先日、母校の後輩にあたる就活生とお話をする機会がありました。
将来は、グローバルな企業に入社して海外勤務をするのが夢だと言います。
アメリカ駐在の経験をした私に色々質問をしたいとのことで、お話する機会を持ちました。
まず、新型コロナウイルスや景気悪化等、先行きの見えない中でも懸命に就職活動に励まれる姿に頭が下がりました。
また、海外で活躍するというブレないビジョンを持っておられることも大変感心しました。
しかし、その大学生の認識の中で一つだけ気になる点がありました。
その場で説明しましたが、ご紹介したいと思います。
それは『外資系企業に入れば海外勤務ができる』という思い込みです。
今回は、この考えが間違っており、外資系企業では海外勤務ができない理由について説明します。
『外資系企業に入れば海外勤務ができる』は間違っている理由
日本人によくある思い込み
日本人の方と話していて、たまにわかってないと思うことがあります。
例えば、英語で仕事をしているとか、アメリカに駐在していた、なんて話をすると、
『てことは、外資系に勤務されているのですか?』と質問をされるときです。
こういう質問をされる方の頭の中では、
海外に関する仕事 = 外資系勤務
というパターンがあるのです。
しかし、これは完全なる間違いです。
外資系企業の支社スタッフになるだけ
たしかに、普段海外ビジネスと接する機会が少ない方にとっては、イメージしづらいことかも知れませんが、外資系企業に就職したからと言って海外ビジネスを担当できるわけではありません。
むしろ、日本国内のビジネスのみの担当となる可能性が高いのです。
なぜなら、外資系企業の日本支社の役割は日本国内のビジネスだからです。
具体例 日系企業のベトナム支社
例えば、ベトナムに支社を持つ日系企業が、現地でプロパーの従業員を採用する場合、そのほとんどはベトナム人の現地スタッフです。
現地での営業や調達等、多くの業務について、現地に精通している現地スタッフに任せるべきです。そのために、現地スタッフを雇うのです。
そういった日系企業が、例えばそのベトナム人をインド支社に異動させたり、アメリカやヨーロッパの支社に異動させることがあるでしょうか。
その可能性はかなり低いと言えます。
なぜなら、そのスタッフはベトナムに詳しいから現地業務のために雇われただけだからです。
わざわざ他国に転勤させても何も本社にメリットはないのです。
マネージャーという意味では可能性はゼロではありませんが、普通はその役割は本社の人間が担います。

外資系企業の日本支社でも話は同じ
以上の具体例を踏まえ、『日系企業』を『外資系企業』、『ベトナム支社』を『日本支社』に置き換えて考えてみてください。
さきほどの現地採用のベトナム人スタッフが、日本支社の現地採用の日本人スタッフに読み替えることができます。
そして、その日本人スタッフこそ、外資系企業の日本オフィスで働く日本人なのです。
彼らは外資系企業で働きつつも、基本的に日本国内のビジネスを見ています。
時に英語で海外本社に報告を入れたりはしますが、報告内容は日本でのビジネスについてなのです。
日本人スタッフに海外勤務の機会がまずないことがおわかり頂けたかと思います。
もちろん、外資系企業に就職することが悪いわけではありません。
給料も良いですし、働きやすいという声もあります。
ただ、海外勤務の可能性という意味では、良い選択ではないのです。

海外を相手に仕事ができるのはむしろ日系企業
それでは、海外を相手に仕事がしたい場合、どういった企業への就職を目指せば良いのでしょうか。
一番の近道はグローバルにビジネスを展開する日系企業に就職することです。
現在多くの日系企業がグローバルにビジネスを展開しています。
海外でビジネスを展開するためは、対象となる国や地域の情勢やニーズを的確に把握する必要があります。
また、海外での売上や利益率等を日々管理する必要もあります。
そのため、日系のグローバル企業では多くの従業員が日々海外を相手に仕事をしています。
また、日系のグローバル企業は、先ほどの外資系企業の本社と同様、海外拠点に本社社員を海外駐在員として異動させます。
このように、海外を舞台に仕事をしたい場合、そのチャンスが多いのは、外資系企業よりも日系のグローバル企業なのです。
グローバルに活躍しやすい日系企業とは?

グローバル展開している日系企業は多くあります。
一つでも海外拠点を持っているという会社は、中小企業も含めて無数にあります。
その中でも就活生に人気があるのはやはり大手企業でしょう。
日本の大手企業のほとんどが多かれ少なかれグローバル展開をしていますが、その中でも海外勤務のできる可能性の高い業界をいくつかご紹介します。
総合商社
言わずと知れた日系グローバル企業です。
入社のハードルは大変高く、最優秀な人材が集まる組織と言っていいでしょう。
待遇も良く、女性受けも高いです。
取り扱う事業の幅やスケールの大きさを考えると、ビジネスマンとして様々な経験を積める魅力的な環境です。
また、グローバルに活躍するという視点でも、メーカーとは違い、少数精鋭かつ各社員の能力によってビジネスを行う側面が強いため、海外でも主体性と裁量を持って仕事をできることが魅力です。
その分、国内・海外問わずに激務というのがデメリットでしょうか。
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メーカー
自動車業界や電化製品、半導体等の日系メーカーもたくさん海外に出ています。
モノづくりの原点にある顧客ニーズを踏まえる上でも、マーケティングの段階から海外に日本人を送るケースも多々あります。
また、生産のための工場を海外に設立するプロジェクトや、現地での生産管理を任される場合もあります。
商品を一から作り出して、お客様の手に届くまではたくさんの労力が要ります。その分様々な役割が必要であり、海外拠点に日本本社から人を派遣するニーズも無くなることはないでしょう。
その意味では、日系メーカーには海外駐在のチャンスが溢れていると言えます。
ただ、注意したいのは、昨今の日系メーカーのグローカル化の動きです。詳しくは以下の記事を参考にして頂きたいのですが、要するに日系企業が海外拠点の現地化を推し進めることによって、日本人の駐在者の数が減っていることです。
メーカーは商品の作り方をグローバルに統一しやすい分、グローカル化のペースが早いと言えます。そのため、今後もこの流れは続くと言えるでしょう。
メーカー勤務のデメリットとしては、総合商社や金融に比べると給料が安いことでしょうか。
他方、個人的な感想ですが、総合商社に比べると、メーカーは労働時間や働きやすさという意味では恵まれていると思います。
その他
海外駐在の可能性が高い業界としてその他挙げられるのは、海運・貿易業界があります。
例えば、日本郵船や商船三井等ですね。
船を扱ったビジネスです。まさにグローバルですね。
大きな船をアレンジしたビジネス、大変やりがいがありそうですよね。
なお、実際に日系グローバル企業に入れたとしても、必ず海外駐在ができるわけではありません。
語学力の向上や会社へのアピール、ライバルとの競争等、乗り換えなければならないハードルは他にもあるのです。
詳しくは以下の記事も参考にしてください。
外資系企業に勤務しての海外勤務は不可能か?

これまで、『外資系企業に入れば海外勤務ができる』は間違っている理由についてご紹介して参りました。
また、海外勤務のためには日系のグローバル企業に勤務することが最良であることにも触れました。
しかし、それでも外資系企業に入って海外駐在をしたいという方がいるかも知れません。
その方向けに外資系企業に勤務しての海外勤務は不可能か?をご説明します。
結論
結論としては、不可能ではありません。
ただ、困難が伴います。かなりハードルは高いと思います。
二つのパターンがありますので、順番に説明します。
外資系企業本社に就職する

一つ目のパターンは、外資系企業の本社に就職することです。
要するに就職する時点で海外に移住するということですね。
それでも問題がなければ、面接さえ通れば海外勤務が可能になります。
しかし、これはなかなかハードルが高いです。
そもそもネイティブレベルの高い語学力を持っていなければ、外資系企業で海外勤務するのは難しいです。
私はアメリカの大学院に留学していた経験もありますが、当時仲良くしていたスイス出身の学生はネイティブに近いほど英語ができるのに、アメリカ企業の面接には軒並み落ちていました。
傍から見ていても、大変高いハードルであると感じました。
また、海外では日本とは異なり終身雇用制度のない国が多く、外資系本社に就職しても成果が出せなかったり、就いたポストが不要になれば簡単に解雇されてしまいます。
新型コロナウイルスによって、外資系エアラインで働いていた客室乗務員が続々と解雇され帰国している現実なんかも参考になります。
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外資系企業の日本支社に就職して、海外勤務を目指す
上述の通り、外資系企業の日本法人に就職し、海外勤務となることは、ほぼありません。
何かのスペシャリストとして大変優秀であり、外資系本社に置いても遜色のない語学力やパフォーマンスを発揮できるのであれば、可能性はゼロではありません。
例えば、日本支社だけではなく、アジア全域を担当して欲しいからシンガポールの拠点に異動して欲しいということもあるかも知れません。
ただ、昨今は、シンガポールのビジネスパーソンの方が英語や中国語を巧みに扱い、日本人と比べて極めて優秀というケースが多いです。
このような環境下でも見劣りしない人材なのであれば、外資系企業の一員として海外勤務を目指してみるのも一つかも知れません。
しかし、そこまでハイスペックな方であれば、海外勤務という視点のみからすれば、日系のグローバル企業に就職するのが近道かも知れません。
なお、今では完全に犯罪者のレッテルを貼られてしまっていますが、元日産自動車CEOのカルロス・ゴーンさんは、このパターンでの成功者のようです。
元々、日産のブラジル支社の工場長に抜擢され、コストカットが評価されたことをきっかけに日産本社のCEOまで上り詰めたようです。
いやはやすごかったんですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事の内容をまとめると以下の通りになります。
・『外資系企業に入れば海外勤務ができる』は間違っている
・海外に関する仕事 = 外資系勤務 というのは、一部の日本人の思い込みに過ぎない
・外資系企業の日本支社に就職するのは、日本支社スタッフとして、日本のビジネス担当になるだけ
・海外を相手に仕事ができるのはむしろ日系企業
・特に総合商社、メーカー、海運が可能性大。
・外資系企業に勤務しての海外勤務は不可能ではないが、とても困難
・海外勤務という意味では、日系企業に就職した方が近道
最後に

グローバルに活躍することに憧れる人は多いです。私もそうでした。
アメリカで生活をして、仕事をして、頑張って本当に良かったと思いました。
とにかく、視野の広がりや自信のつきかたが他の経験とは比べ物になりません。
まさに人生を捧げて良い経験だと思います。
そういった経験を積みたいのに、例えば給料とか、ステータスなんかを気にして外資系企業を選んでしまうのはもったいないです。
この辺り、就活生の方々は、自分が本当は何をしたいのか?を日々深掘りされることをお勧めします。
一度きりの人生、後悔のない選択をしてください。
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