日本の終身雇用とは?もう終わり?メリットとデメリット 海外雇用制度との比較

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最近は、世界での日本のプレゼンスが落ちており、日系企業もいよいよ終身雇用を維持することができないのでは?という声が聞かれるようになりました。

最近では、トヨタの会長や経団連会長が、終身雇用が維持できないことやその見直しを国に対して提案したことで話題になりました。

新型コロナウィルスの影響でこの議論は一旦止まりそうですが、そう遠くない未来に、必ず議論が必要になるトピックでしょう。

なぜなら、終身雇用制度は、日本企業の競争力を低下させる大変問題のある制度だからです。

今回は、日本の終身雇用制度について、海外の雇用制度と比較しながらご紹介します。

終身雇用制度とは

では、そもそもこの終身雇用制度とは何なのでしょうか。

終身雇用、それは要するに、会社が簡単に従業員をクビにできない制度を言います。

日本の労働法上は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)と定めています。

これは、法律の建前上「解雇は自由」とされていた時代に、裁判所が判例を通じて築いた解雇権濫用法理を、明文化したものです。

内容としては、要するに、解雇をするには、その従業員を会社から追い出すしかないと言えるほど、合理的な理由が必要になります。

そうでない限り、基本的に解雇は無効になるということです。

解雇とは

では、その解雇とは一体何を意味するのでしょうか。

正社員をクビにすることだけでしょうか?それともよく聞く雇止めや派遣切りも「解雇」にあたるのでしょうか。

解雇とは、「会社が従業員に合意なく、一方的な意思表示によって労働契約を解除すること」を言います。

一方的に労働契約を解除することを指すので、従業員が正社員であっても、契約社員であっても、とにかく雇用契約の期間内に会社が一方的に契約解除とした場合には、「解雇」に該当します。

他方、契約社員との間の雇用契約満了時に次回の契約更新を行わないという話をするのは、「解雇」ではなく、「雇止め」の話になります。

先ほど説明した通り、この「解雇」には、解雇権濫用法理が適用され、その従業員を会社から追い出すしかないと言えるほど、合理的な理由がない限り、解雇は無効になってしまいます。

また、クビになった従業員から裁判を起こされた場合、解雇が無効になるだけでなく、解雇とされた期間内にその従業員に支払うべきだった給料相当の金銭支払も必要になります。

そのため、会社としては、後から訴えられたら負けるとわかっているのに、理由もなく、従業員を解雇することはしません。

では、人件費カットをしたい場合に、会社はどうするかというと、解雇しづらい正社員(定年までの雇用契約)の数を絞ります。そして、非正規の従業員を増やして、契約満了の形で調整しやすくするのです。

これが、「正社員はクビにならない」とか、「契約社員は立場が弱い」と言われる所以です。

海外の終身雇用ではない雇用制度(アメリカ)

海外では、そもそも終身雇用制度でないことが多く、従業員の雇用は保証されていません。

そのため、会社はいつでも従業員をクビにすることができます。

そのため、日本のように、正社員と契約社員という区別もありません。

例えば、アメリカには、Employment at willというルールがあります。

どういう意味かというと、雇用は使用者の意のままにある、ということです。

つまり、経営者の心ひとつで、その人物を雇い続けるかどうか決めることができるのです。

終身雇用でないことの最大のメリットは企業の競争力アップ

終身雇用がないことで、海外の企業は弾力性をもって経営に臨むことができます。

たとえば、自動運転やAI等の新たな分野に参入するというときに、日本の大手が恐る恐るになってしまう原因もここにあるのです。

つまり、新しいビジネスがうまくいかなかった場合に、無駄に人員を抱え続けるリスクがあるかないかという点です。

アメリカの大手企業であれば、自動運転のビジネスがうまく軌道に乗らなかった場合には、雇ったエンジニアや工員を一気に解雇できます。

業績が悪くなったり、見通しが立たなくなった場合、簡単に従業員をリストラができてしまうのです。

他方、日本の企業は、先ほどの解雇権濫用法理があるため、新規ビジネスのために会社全体の業績が著しく悪くならない限りは、リストラを認めてもらうことができません。

リストラのことを、日本の労働基準法の下では、整理解雇と呼んでおり、これが可能になるための要件はより詳細に定められていますが、とにかくハードルが高いのです。

単に業績が悪くなったというだけでは足りず、その新規ビジネスに割り当てていた従業員を他の子会社に異動して使えないのか、といった考慮を尽くす必要があるのです。

それでも、なお、解雇するしか手段がないという状態にあることが認められて初めて、日本では合法的に正社員をクビにすることができるのです。

以上の通り、従業員を解雇することのハードルがとても高い日本の企業と、経営者の一存でスピーディーに解雇を決定できるアメリカの企業とでは、競争力が段違いに変わってくるのは明らかです。

終身雇用でない制度のデメリット

もちろん、終身雇用がない場合のデメリットもあります。

後ほど説明する終身雇用制度のメリット③と対応しますが、終身雇用でない制度の下では、人材の配置が難しい場合があります。

例えばアメリカでは、終身雇用や新卒一括採用制度がなく、個々の従業員の経験や能力にも差があります。

いわゆるジョブ型と呼ばれる採用方式で、空いているポストを担う人物として企業が求めるものにマッチした人が、その仕事のみを担当するという前提で雇用されます。

仕事の種類・責任や求められる能力・経験に応じて、給料も変わってきます。

会社にいる従業員の間で経験や能力が大きく違ってくるため、一人一人の従業員の代わりがいないということになってきます。

そうなると、スタッフが一人辞めた場合に、その人の代わりがすぐにはいないということになります。

当面は、その辞めたスタッフの上司が何とか穴埋めをしつつ、採用活動を始めることになります。

しかし、景気次第ではすぐに代わりが見つかるわけでもありません。

会社は代わりのスタッフを見つけるのに時間や努力を要することになります。

その意味では、終身雇用でない制度の下では、人材配置の柔軟性が乏しいとは言えます。

終身雇用のメリット

以上、終身雇用制度のデメリットばかりを並べてきました。

一方で、終身雇用にはメリットがあることも事実です。以下、いくつかご紹介します。

①従業員の生活は安定する

終身雇用が保障されていることで、従業員の生活は安定します。

突如解雇され、生活費の基盤を失うことがないからです。

従業員にとっては、暮らしの安定を手に入れることができるため大変魅力的な制度です。

また、日本企業のほとんどの人事システムが、終身雇用や年功序列をベースに作られており、誰でも50過ぎまでは自動的に昇進、昇給していきます。

そのため、日本人の労働者は自分の未来の見通しが立てやすく、家の購入やローンの組み立ても行いやすいです。

②従業員の忠誠心が高まる

終身雇用の国では、従業員は一生その会社に骨を埋めるつもりで入社するので、会社に対する強い忠誠心を持ちます。

また、一生その会社に勤めるため、人間関係等も良好になりやすいです。上司や部下と師弟関係が築かれやすいです。

加えて、社内で嫌われたり、仕事ができないと思われると会社にいづらくもなるため、多くの従業員が仕事を必死にこなします。

そのため、会社としても、従業員をコントロールしやすく、マネジメントもスムーズに進めることが期待できます。

③従業員の配置がしやすい

日本の終身雇用は、新卒一括採用と深く結びついています。

同じ時期に採用された従業員は、ほとんどおなじタイミングで昇進し、似たような経験を積みます。

大体似たようなタイミングで異動をして、似たような仕事、経験を積んでいきます。

そのため、例えば、一人のスタッフが退職したり、解雇された場合でも、その代わりとなる人材が何人かいます。

なぜなら、従業員間で経験や能力、労働条件に大きな差がないからです。

よって、その空いたポストに他の似たような人をあてがえば当面はなんとかなってしまうのです。

このように、日本企業は人の配置については柔軟に対応可能です。

他方、例えばアメリカでは、従業員間の能力や労働条件が人によって異なります。よって、管理職が一人辞めた場合に、その人の代わりを探すために、企業は時間や努力を要することになります。

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終身雇用のデメリット

終身雇用制度のデメリットとして、前述した企業の競争力が失われることに加えて、その他のデメリットを以下ご紹介します。

国民の多様性に欠ける

新卒一括採用と終身雇用制度の下で雇われた従業員は、皆同じマインドを持ち、多様性に欠けてしまいます。

企業側も新卒一括採用と終身雇用制度をベースとした人事管理のしやすさをメリットと感じているため、あまり他とそぐわない中途人材を有用することもできづらい風土が出来上がります。

また、中途入社の昇進が頭打ちになることも多くあります。

そうなると、中途入社の従業員のモチベーションが下がる等、従業員全員の能力を最大限活用することが難しくなってきます。

また、終身雇用でクビにならないことを前提に、社内で嫌われないよう、角の立つことを言わなくなります。

例えば、上司の言うことは絶対であったり、相手の意見にも反対しない空気ができてきます。

そうなると、イノベーションが起きづらい環境になってきます。

高度経済成長期からバブル期にかけての時代のように、諸外国が日本を崇めるほど、日本企業に競争力があった頃は、終身雇用制度がうまく回っていました。

日本のサラリーマンは文句を言わずに、ただ上の言うことを聞いて、仕事をしていれば成果が出たのです。

その時代は、文句や意見を言わない方が社会がうまく回ったのです。

しかし、現在は状況が違います。

IT`やデジタルの進化が大きな背景にありますが、変化に対応すべきこの世の中では、むしろ意見は言っていくべきなのです。

そういう意味では、文句や意見を言わない方が良いと言う終身雇用制度は、現在では不向きと言わざるを得ません。

挑戦しやすい環境が整わない

アメリカでは終身雇用でない分、再チャレンジがしやすい環境が整っています。

例えば、年齢による差別を禁止する法律の存在があります。

この法律の下、アメリカでは、年齢による差別が違法とされます。

例えば、会社の面接に20代の男性と50代の男性が来た場合に、若いという理由一つで、その20代の男性を選び、50代の男性を落としてはならないのです。

発覚した場合、企業には法律違反として罰が課されます。

この法律があることによって、アメリカ人はいくつになっても新しい挑戦をすることができます。

例えば、50歳を過ぎてから大学に入りなおして専門分野を磨く人もいます。証券マンを辞めて医者になるというキャリアチェンジも可能なのです。

一方で企業側も、この法律があるからこそ、ためらいなく従業員を解雇できます。

もちろん、日本でもこのような人はいます。

しかし、日本には、アメリカのように、年齢による差別を禁止する法律がありません。そのため、専門知識をつけたとしても就労先がないケースが多く、断念してしまう方が多いです。

努力次第で人生はいくらでも好転させられるという、社会制度が構築されているため、アメリカ人は日々前向きに努力ができます。

失敗しても立ち直れるという意味で、起業というチャレンジにもつながりやすいです。

GAFAと言われるまでに大きくなったIT企業をはじめ、アメリカで多くの優良スタートアップが生まれているのも、このような背景があるからです。

日本の終身雇用は終わるのか?(持論)

そもそも、日本の終身雇用制度の根本ルールである、最高裁判例で示された解雇権濫用法理自体を、最高裁自信が明確に覆す時まで、終身雇用制度が終わる事はありません。

もちろん政府としては経済特区などを作りその地域内であれば、企業もある程度柔軟に解雇が可能になるとか、例外的な制度の導入を検討することもあり得ると思います。

一時期検討が活発になっていた退職金支払いを前提とした退職合意制度等も、終身雇用制度の例外的位置づけになります。

しかし、完全にシステムが変わるには、まだまだ時間がかかると思います。

あまりにも国民生活に与える影響が大きいので、何十年レベルで議論をしていかないと納得なんて得られないと思います。

それこそ世間を二分する大きな選挙が必要になるのではないでしょうか。

そうなるまでは、やはり根本的な労働生産性の問題は解決されず、日本は衰退し続けるんだろうと思います。

アメリカ以外の海外の雇用制度

アメリカ以外の国の解雇制度についても少しご紹介します。

イギリスは、アメリカほどではないものの、日本より解雇規制は緩やかと言われます。

その他ヨーロッパでは、日本と同様解雇規制が厳しくありましたが、昨今の経済情勢の悪化を受けて、解雇規制を緩め、労働市場を活性化する国も出てきているようです。例えば、スペインが挙げられます。

南米や東南アジアは、労働者の保護に手厚いと言われます。

シンガポールは、アメリカと同様、使用者の自由に解雇ができるようです。

逆に、中国は、労働者の保護に手厚いようです。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。        

以下、簡単にまとめさせていただきます。

  • 日本が採用する終身雇用制度とは、どうしても必要な場合以外は、従業員をクビにできない制度のこと
  • 終身雇用制度の最大のデメリットとしては、従業員を簡単にクビにできないことによる企業の競争力の低下。
  • 反対に、終身雇用でない雇用制度の方が、従業員を簡単にクビにできるので企業の競争力は上がる。
  • 一方で、終身雇用にもメリットがある。それは、従業員の生活が安定する、従業員の企業への忠誠心が高まる、従業員の柔軟な配置が可能になること。
  • 逆に、終身雇用のその他のデメリットとして、国民の多様性が出てこない、挑戦しやすい環境にならないといったことがあります。
  • 日本の終身雇用は、この変化の大きな時代にはそぐわないため改善が必要だが、国民の生活に大きく関わるため、時間がかかりそう。

以上、参考になれば幸いです。

また、関連記事をご紹介します。今日説明したようなことを英語でも説明されたい場合には参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

元アメリカ駐在員の純ジャパビジネスパーソン。日系メーカーに勤務。グローバル志向。次はヨーロッパへの駐在を目論んでいる。TOEICは990点(IP)。
三年間でTOEICを400点台から900点台まで上げた経験や、海外での仕事を通じて学んだ外国人とのコミュニケーションスキルやマインド等をブログや記事執筆の形で発信している。
翻訳やライティング、コンサル業務も展開している。

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